ボーイミーツピンク

男子がピンクを好きになるように、臆することなく好きなものをむふむふ愛したいんだ

ボーイミーツピンク

 私はピアニカはピンクではなく、青を選んだ。

 先生はピアニカの色の注文で青を選択した私に記入ミスでないかもう一度聞いた。

 昔のほうが女子とか男子とか意識してたなあと思う。ランドセルやピアニカは性別でだいたいで色分けされたり、何かと整列すれば男女別の名簿に並ばされたり。制服だって女子はスカートだし、身だしなみ検査では膝をついて立たされてスカートの長さ検査されたり、男子は髪型について長すぎたら怒られてたし。

 型にはまった典型的な、大多数の大人が安心するような見た目のかまぼこ。

 先生たちはいつも言っていた、見た目の個性は本当の個性ではない、中身の個性を大切にしろって。でも、外見の解りやすい個性を受け入れられなくて、どうして中身のあいまいで掴みどころのない個性を受け入れられるのだろうか。

 始業式の朝、切られたかまぼこのように一列に整然と並ぶ後ろ姿を見ながらそう思っていた。

 大人になってからは好きな色はチャコールグレー、マニアックなSFアニメにのめりこみ、ナイキのスニーカーとサムシングのジーンズでどこにでも行き、ピアスをこよなく愛するどこにでもいるただの人になった。自分の意識ではどこか男女区分けとは解放された気でいて、中高苦手だったピンクとも少しずつ仲良くしている。ただ、周りが子育てとかの話をするようになって、女の子は手がかからない~だの、男の子は何をしでかすかわからない~だの、やっぱり女の子は生まれてきた時から女の子だのという話題が次第に上るようになった。

 子供がいないけど、万が一できたとして、自分もそういう男女っていう二択で閉じ込めて認識していくのだろうなあ。

 

「おれ、ピンクが一番好きなんだよね」

 中学生男子のこの言葉に面食らった自分はもうピアニカを性別で色分けする大人と一緒になってしまったのだろうか。

「へえ、何で?」

「だってかわいいじゃん」

 ペンケースもペンもトレーナーも確かにピンク。そうすると彼の友人の男子もまた、

「あー、俺も好き!ピンクのペンももってるよ」

 とピンクのペンで豚を描いて見せてくる。

 ピンクって女の子の色っていうイメージがあったけど、何にも臆することなく好きっていうピンクのその色は、もう女の子のイメージの色っていうより、新たなジェンダーレスのシンボルカラーに見えた。

 

 ピンク好きの男子たちに幸あれ。